
おう、おつかれさん。 今日も朝イチから、よう来てくれたな。 眠たい目をこすりながら、俺たちは鉄のゲートをくぐる。 冬はまだ真っ暗、夏はもう太陽が顔を出してる。 でも、季節に関係なく響くのは、あの―― 「ガガガガガガ!」 コンクリ砕くブレーカーの音。 「キュイイイイン!」 鉄板を切るサンダーの火花。 「ドンドンドン!」 杭打ちのリズムは、まるで目覚まし代わりだ。 ヘルメットよし、軍手よし、安全帯よし。 だけど気持ちは、まだ昨日の疲れを引きずったまま。 それでも――ここじゃ、立ち止まるヒマなんてない。 「おーい、こっち運んどいてくれー!」 「そっち、寸法出たかー?」 怒鳴る声も、笑い声も、ぜんぶ工事のBGMだ。 機械の轟音にかき消されても、伝わるんだ、不思議とな。 昼になりゃ、コンビニ弁当を日陰でつつく。 冷めても、うまい。不思議とうまい。 タバコ吸いながら、誰かが言う。 「なあ、お前、彼女できたん?」 笑いが起こる。誰かが照れてそっぽ向く。 こういう時間が、ちょっとだけ救いになる。 午後は、またコンクリ打設。 時間との勝負だ。流し込み、均して、バイブ打って、ならす。 チームワークが試される、いちばん大事な工程。 陽が傾いて、現場に影が落ちてくる。 トンボが飛びはじめ、空がオレンジに染まるころ―― あの音が、ふっと止まる。 静寂の中、ふと見ると、 鉄骨の隙間から見える空が、まるで完成図の一部みたいだった。 「今日も事故なし!おつかれさん!」 誰かの声に、みんなで「おーっす!」と返す。 その瞬間だけは、俺たち、ちょっとだけ誇らしい顔してる。

