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実家に帰ると、昔の君が待っている

久しぶりに開けた玄関 変わらない匂いが迎えてくる ただいまの声に重なるように 奥から家族の声がした 昔より低く見える机 壁に残った小さな傷 子ども部屋の扉を開けば 棚の上には懐かしい君 実家に帰ると 昔の君が待っている この街を出た日の姿で 時間を止めて座っている 忘れていた記憶の名前を 君の顔が思い出させる 大人になった私の中で 幼い季節が目を覚ます 受験勉強に疲れた夜 君を机に座らせていた 卒業式から帰った日には 制服のまま抱きしめた 家を出る朝は荷物が多く 君を連れていけなかった すぐ戻るからと言ったまま いくつも季節が過ぎていた 実家に帰ると 昔の君が待っている 責めることなく笑うように 同じ角度でこちらを向く 外の世界で疲れた私を 昔の呼び名で呼んでくれる 何者でもなかった頃へ ほんの少しだけ帰っていく ほこりを払って膝に乗せ 近況をひとつずつ話した 夢が変わったことも含めて 今の私は元気だよと 帰る時間が近づいたら また棚の奥へ戻すけれど 次はもっと早く会いに来ると 今度は本気で約束する 実家に帰ると 昔の君が待っている ここに残した私の一部を 静かに守り続けている 玄関を出て振り返るたび 帰れる場所があると分かる 次のただいまを言う日まで どうか変わらず待っていて