
水路の終わり、行き詰まりの角 白き屍を重ねるように 押し寄せては凝り固まる『花筏』 それはかつて、この城の淵で 行き場を失った最期の眼差し 天を仰ぎ、散っていった命が 今もそこに留まっているかのように 月は白壁を照らし 花は音もなく水面を閉ざす 幾度の春が過ぎたのか 如何程の名が忘れられたのか 城は語らず、ただ東風だけが 散りゆくものを運び続ける 桜は人の血を啜るという ならば、この美しさは 何を吸い上げてきたと云うのだろう 月影の下、濠の角には 行き場をなくした花弁が 幾重にも重なり 水の深ささえ もう、わからない 踏み入れば、花は静かに 道を譲るだろう 何事も無かったかの様に 再び水面を閉じるだろう 生暖かな風が頬を撫で ふと、足を引く。 見上げれば、春。 見下ろせば、春。 その狭間にあるものだけが 今も、見えない。 水底から、じっと 見上げられているような 静かな気配に 息を殺した。

