
「人は、いつから欲しくなるのだろう。」 「欲が出たら、そこが引き返せなくなる始まり。」 最初は小さな願いだった あと少しだけ 届けばいい 昨日より少し 認められたい それだけだった はずなのに ひとつ手にした その瞬間 足りないものが 見えてくる 満たされたはずの心には また新しい 空白ができた 欲しいものを 追いかけて 気づけば何かを 置き去りにした 戻れる場所は まだあるのに 戻る理由を 失っていた 欲が出たら 始まりだった 終わりじゃなく 始まりだった もっと欲しい もっと遠くへ その言葉に 背中を押され 昨日の自分を 追い越して 知らない自分に 近づいていく 「彼は当時、まだ気づいていなかった。 欲望には、終点がないということを。」 成功すれば 幸せなのか 数字が増えれば 満たされるのか 誰かの拍手を 浴びるたび 静かな声が 遠ざかっていく 「あの頃は よかった」 そう言われても 戻れない 失ったものを 数えるより まだ欲しいものを 探していた 「一度、手に入れたものは…… 失うことが、怖くなる。」 欲望は悪くない 夢を見ることも 悪くない ただ一歩だけ 踏み越えたとき 欲しいものと 欲しくなったものの 境界線が 消えていく 欲が出たら 始まりだった 引き返せなくなる 始まりだった もっと高く もっと強く 昨日よりも 遠くへ行く 手にしたものを 守るために また何かを 欲しくなる 「そして彼は、最後にひとつだけ問いかけた。」 「俺は……何が欲しかったんだ?」 「欲しかったのは……」

